Kanoda Lab.
Publicationsのみ更新中


About us
鹿野田研にようこそ

Member
研究者のメンバー

Research
研究テーマ

Thesis
学位論文・受賞歴

Join us!!
鹿野田研に興味のある学生へ

Access
所在地・連絡先

Links
関連リンク

Photo
イベントなど

研究内容の紹介:東大時代のサイトをアーカイブとして残しています。



分子性物質の物理学

私達の周りには様々な物質があります。その構造や性質を物理学として体系化して理解し、そして新しい物質、新しい性質の創造へと展開する、これが物性物理学です。物質をつくる一つ一つの原子には帰着できない驚くべき性質を目の当たりにし、その起源を解き明かすのがこの学問の醍醐味です。その時代その時代に見えているあるいは見ようとする物質や物性が研究の対象となり、その物理学の構築と対象とする物質の拡大が互いにポジィティブフィードバックをかけながら演繹的に着実に発展してきました。一方で、その時代に全く見えていなかったものが突如サプライズとして表れ、不連続で劇的な発展が起こることもしばしばです。高温超伝導体は、よい金属を求める先にあったのではなく、絶縁体の研究から起こったのでした。"着実な発展とサプライズ"、これこそが研究の面白さです。これを堪能できるかどうかは、対象とする物質系にかかっています。私達の研究室では、分子が凝集した固体(分子性物質)がその最右翼の一つだと考えています。特にその中でひしめき合っている電子の集団が面白い! その振る舞いは不思議で、目まぐるしいほど多様な姿を見せます。現在、鹿野田研究室では、強相関電子系や超伝導をはじめとして、磁性、半導体、誘電性にまでまたがる以下の課題に取り組んでいます。

>>ちょっと寄り道して、一般的な分子性物質の話を聞く。


Mott転移 Gr.

電子相関が強い系では電子が互いの強い反発で身動きがとれず、絶縁体となる場合があります。このような絶縁体をモット絶縁体とよび、圧力やドープ量などのパラメータを僅かに変えることで、高温超伝導、スピン液体、特異な臨界現象などバラエティ豊かな物性が現れます。有機導体は、加圧により容易に変形し、電子相関をパラメータとして制御できる物質です。有機導体を舞台に研究することで、私達は無機物質も含めた幅広いモット絶縁体の物理の解明を目指しています。

Spin液体 Gr.

量子スピン液体とは、強い量子ゆらぎによって極低温でもスピン*が秩序化しない特別な量子状態です。互いに強く相関しているものの、秩序化はしていないという意味でスピンの液体状態であるとみなすことができます。この量子スピン液体のもとでは、電子は量子力学的にもつれ合う結果、電子がスピンと電荷を担う粒子へと分割されるという、ふつうの真空中では考えられない現象が起きていることが期待されています。

*荒っぽく言うと、電子が担うこれ以上分割できない磁石を発生させる元。

電荷秩序/ガラス Gr.

電荷秩序は、電荷が互いを避けて周期的に局在することで絶縁体となった状態 であり、強相関電子系を代表する絶縁化の機構の1つです。この状態は、並進対称性の破れを伴う、いわば電子の結晶化であり、その幾何学的な自由度が多彩な電子状態を生み出します。電荷秩序/ガラスGr.では、幾何学的なフラストレーション効果によって、電荷が古典的に不均一に凍結した電荷グラス相と呼ばれる状態や、電荷揺らぎを伴うと考えられる新たな超伝導状態について研究をしています。

Dirac電子系 Gr.

Dirac電子系とは、相対論的量子力学を記述したDirac方程式によって表されるバンドを持ち、有効質量がゼロとなるような電子系です。Dirac電子系はグラフェンでよく知られていますが、実は有機物質α-(BEDT-TTF)2I3においても一風変わったDirac電子系が実現されています。加圧でその状態が劇的に変化する様子をNMRや電子輸送特性で研究しています。

S. Katayama, A. Kobayashi, and Y. Suzumura, J. Phys. Soc. Jpn. 75 (2006) 054705.

π-d系 Gr.

格子・電子相関に加え、分子軌道の自由度が加わったπ-d系では、巨大磁気抵抗・磁場誘起超伝導など多彩な電子相が実現します。

伝導を担うπ軌道に磁性元素のd軌道を混成させることで、新たな磁性金属相を探求するGr.です。単一分子種伝導体[M(tmdt)2]や(DX-DCNQI)2Cuではπ-d混成を元素置換・圧力で制御し、システマチックな軌道混成効果を研究しています。

S.Ishibashi and K.Terakura, crystal, 2, 1210-1221, (2012)

中性-イオン性転移 Gr.

ある種の有機錯体では、圧力や温度を変えると、ひとつの物質でイオン結晶からファンデルワールス結晶を移り変わります1。この現象は中性-イオン性転移と呼ばれ、単なる結合力の変化だけではなく、電荷‐スピン‐格子の自由度が複雑に絡むという他の系にはない特徴を持っています。我々は電気抵抗測定、核磁気共鳴を用いて、この系が示すユニークな現象の解明と新規相の開拓を目指しています。

1: まるで塩と砂糖を移り変わるかの様に。